- この度、壽屋隣りの野守の宿のお雛様展示にて、横尾了子さん宅のお雛様を初公開いたします。公開に先だって、お雛様と東根市本町近辺の歴史についてお二人に語っていただきました。
【左】東根の歴史に詳しい野口孝雄さん (東根の歴史と民俗を探る会事務局長/東根の旧家の所蔵品調査研究会会長などを務め、東根市の歴史研究やお雛様発掘や展示に精力的に取り組んでいる)
【右】横尾了子さん(昭和28年横尾四代目故英二氏に嫁ぎ、長年に渡り小学校で教鞭をとり、退職)
東根に春を呼ぶお雛様。
- 横尾了子さん
- 私の旦那様のおじいさんにあたる初代・栄五郎が分家をして「いげたや」という呉服屋を始めました。今から120年前の明治23年から29年ごろに産まれた娘さんのために、栄五郎自らが、もしくはご本家で準備したものではないか?京都との取引などもあり、その際に手に入れたものではないかと聞いております。
- 野口孝雄さん
- なかなか古い時代のお雛様ではないかとお見受けします。享保雛に近い古今雛で、150年から180年ほど前のものではないでしょうか?お内裏様に比べてお雛様の方が時代が古いようにも感じます。もしかして、別々のお内裏様とお雛様かもしれないような…。
- 了子さん
- お内裏様とお雛様が2組ありまして、その他に市松人形やじいとばあ、お膳など段飾りにして、八畳間の半分以上を使って飾っていました。その際に入れ替わってしまったのでしょうか?
- 野口さん
- 古いお雛様にはよくあることのようです。最初に手に入れられた際にすでにこのようになっていたとも考えられます。初代の方が山形市の酒蔵からお婿さんに入ったと伺ってますが、そちらの酒蔵からいただいたとも考えられますね。
- 野口さん
- 東根の本町通り(野口先生のお店である阿部はきもの店、横尾了子さん宅、壽屋が面する通り。)は4大露店市、明治初期から雛市、1780年前後から盆の市が立っていました。ツメの市、だんご木市とともにとても盛大で、昭和44年ごろまで行われていました。特に雛の市は、3月27日は村山市、28日は東根、29日天童市などと連日周辺市町で行われ、4月3日の谷地は現在も「谷地ひな祭り」として継続されています。お雛様関連の商品や、日用雑貨、生鮮食料品なども販売されて近郷近在から人々が集まりとても賑わっていたということです。私も子どもの頃の記憶として残っています。
- 了子さん
- その雛市に合わせて旧暦でお雛様を飾っていた記憶があります。
- 野口さん
- 東根の歴史を映し出す雛の市をぜひともこの本町で再現し、お雛様の展示とともに後世に引き継いでいきたいものです。
- 了子さん
- おばあちゃんからもっと詳しく話しを聞いておけばよかったとも思います。現在東京で暮らす息子達が今後どのように受け継いでくれるかは不明ですが、私自身、仕事をしながらも、娘はいないのですが必死で飾り続けて参りました。いい思い出です。
- 江戸時代からのお雛様が、明治、大正、昭和、平成と、この町の人々を優しく見守ってきたであろう光景が浮かびます。どうぞ、このお雛様に会いにいらしてください。
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2017年 春
よこおともえ記