2016年12月7日

山形、冬の漬物

山形に伝わる代表的な冬の漬物、「おみ漬」と「青菜漬」。

伝えられた味をここから。

山形県内陸地方は〝東の山形、西の京都″と言われるほど、独自の漬物文化が発達してきた地域。漬物師範・横尾昭男(弊社会長)は、長きに渡り各地の漬物名人を訪ね、その味を伝授いただき、書き記してきました。その見事な味を多くの方に食べてほしいと、寿屋漬物道場では今日も愛情いっぱいに漬け込み作業が行われています。

冬の食卓を支える、山形のお漬物

青菜漬

山形名産、青菜の醤油漬。

山形の冬に欠かせないのが、越冬のために食されてきた漬物です。その代表格となる青菜が旬を迎えました。そもそも青菜は明治時代に奈良県から山形県農事試験場に導入されたもの。全国的には高菜と呼ばれ、広島県では広島菜、福岡県ではカツオ菜など地域によって食感や風合いが異なるから不思議です。山形の青菜はぱりぱりとした食感と、風味豊かな味わいが人気。収穫された青菜を干す光景は、晩秋から初冬の風物詩となっています。


おみ漬

近江商人に由来した漬物、おみ漬。

おみ漬けは、最上川を利用した船運が盛んだった江戸時代、近江商人が伝えたものと言われています。諸説あるようですが、所帯を離れ山形に滞在していた彼らは、野菜を細かく刻むことで漬かりやすくし、シンプルな味付けで食していたという説も。つまり始まりは、男の料理だったのでしょうか。当時はまだ青菜が栽培されていなかったため、大根の葉を利用していました。歴史の中で育まれた漬物文化は、山形の家々、お母さんたちの手によって今も引き継がれています。


赤かぶ漬

山形県産「温海かぶ」

旬の色鮮やかな赤かぶ漬は、庄内地方で出会ったもの。特有のほのかな辛味と絶妙な酸味に惚れ込み、山形県産「温海かぶ」の種子を取り寄せ東根近郊の農家の方々に委託して栽培しています。
あざやかな赤は、かぶそのものの赤です。漬け込むことで赤かぶ本来の色がよりあざやかに発色されます。本格醸造りんご酢の酸味と砂糖のみの甘味、かぶ特有の辛みとぱりぱりとした歯ざわりが心地よい一品です。


食べていただくこだけではなく、自ら作ってほしいと、漬物師範が書き記してきた記録の一部は「秘伝書」としてまとめ、お分けしております。山形の漬物をどうぞご堪能ください。

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青菜畑を訪ねて



青菜栽培を行っている村山市の農家、松田常夫さんにお話を伺いました。畑は名水いたや清水で知られる葉山の裾、樽石の丘の上にあります。広がる緑の山々と見下ろす街の景色。澄んだ空気にくっきりと映えて見えました。冬は2mもの雪に覆われるこの地域、青菜は保存食として大切に食べられてきたと松田さんは言います。「大きな漬物樽の底に青菜を、その上に白菜を漬けて順番に食べていましたね。青菜は秋に漬けて春が来ても食感がそのまま。煮てもおいしいから」。畑には背丈の違う青菜が、階段のようにきれいに整列していました。本来越冬野菜と言われる青菜ですが、驚くことに松田さんの畑では9月末から収穫が始まりまること。「毎年待ちわびてくださるお客様のために、栽培時期をずらして種まき、やや早めの収穫期を迎えるものもあります。高原のような気候を持つこの場所の特権ですよ」。すると突然降り出した大粒の雨・・・大きく育った青菜の葉が、今にも雨をはじき飛ばさんとばかりに「ぱりっぱりっ」と音を立てました。「昼と夜の寒暖の差、そしてこの水と空気が、質の良い青菜を育てます。今年は夕立が多かったせいか、最高の青菜が育ちましたよ」。


旬の野菜にさらなる命を

朝、寿屋漬物道場に収穫したばかりの青菜が届きました。ほのかに柔らかな土の香りが漂い、葉も茎も瑞々しく新鮮そのもの。おみ漬け用に水洗いされたものは、細かく刻んでさらに汚れを落として水切り、他の野菜と一緒に漬け込みます。しかし青菜のみで漬ける場合、鮮度がよくしゃっきりしていると茎が折れてしまうため、2日ほど塩漬け。加工しやすくなったものをしっかりと水洗いし、ごみや枯れ葉を取り除いた後調味料を加えて漬け込みます。「ここでひともみすると、青臭くなくなって、色よく仕上がるのよ」作り手が触れるたびに活き活きと変化を遂げる青菜。一つ一つ丁寧に袋詰めを行い、9月下旬より春までお楽しみいただく予定です。

保存料を加えず昔ながらの漬け方をしている青菜は、春が近づくにつれべっ甲色になっていきます。これまで鮮やかな色合いのままに食していただきたいと冷凍保存を試みましたが、独特の食感を損ねてしまうため、課題が残されてきました。しかし近年の冷凍技術の進化により、色・食感・風味それぞれを伝える漬物が見えつつあります。受け継いだ伝統の味を真っ直ぐにお楽しみいただけるよう、日々努力し作り続けて参ります。

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