- 壽屋の茜姫をはじめとする梅商品。
その梅を作る東根の梅農家の滝口さんにとって、理想の梅とはどんなものか、漬物師範がたずねました。
長年の果樹栽培
- 漬物師範・横尾昭男
- 滝口さんの家系は、歴代果樹つくりがお上手な方が多いですね。果樹王国東根でも果樹農家の指導者的立場ですね。
- 東根梅農家・滝口良子さん
- 私は、生まれた家も果樹農家で、お嫁に来た先もなので、もうずいぶんと長いこと果樹を作りつづけているんだ。五十年にはなるかな?子供のころから手伝いもしてたから、もっとかな?昭和三十七~八年ごろから、たばこの葉の栽培から切り替えて梅の苗木を植えたのよ。これが節田梅で、植えてから実が実るまでは六年ぐらいかかった。
- 横尾
- その節田梅で茜姫を作るようになって、二十年以上はなるね。節田梅っていうのは、花がきれいでいいもんね。
- 滝口
- ピンクだものね。梅は、毎年なる(実る)といいけど、なかなかそうはいかなくてね。
- 横尾
- なる(実る)のと、ならないのと、差が激しくてね。
- 滝口
- 去年はずいぶんとならないんだっけ。
- 横尾
- でも、実がならないと粒が大きくなるね。
- 滝口
- 農家側からすると、粒が小さいほうが数多く実っていいんだよね。粒が大きいとあんまりね…(笑)。
- 横尾
- 壽屋は、ちょっと粒大きいほうがいいんだよな。
満開の節田梅の花。ピンク色が青空に映える
梅の実りは、お天とう様次第。
- 横尾
- 梅の実り具合は、だいたい、四年に一回はずれがくるのよ、決まってんなね。
- 滝口
- んだ。四年に一回。
- 横尾
- 今年は花が咲いてる時に雪も降ったけどね。お店さ来てくれるお客さまは、「雪ふったけど梅大丈夫?」って心配してくれるけど、梅の花に雪降った事なんて、今までも何回かあると思うよ。自家受粉だから、花の時期の寒さは、あんまり、関係ないしね。
- 滝口
- んだね~。なってみないと、分からないね。
- 横尾
- 豊作と不作は、結局のところ、周期だ周期ね。
- 滝口
- 不作の年を何とかして、人為的に不作じゃなくするなんて出来ないもね。
- 横尾
- さくらんぼも正確に見ると、やっぱりあたりはずれはあるけど、梅ほど激しいものは珍しいのではないかと思う。
- 滝口
- んだな。何年作ってても分からないんだ。
色づく前の節田梅
理想の梅は節田梅。
- 横尾
- 節田梅は、皮は薄いし、香りはいいし、実はつまってるし、こんなにいい梅はめったにないね。なんといっても茜姫には適してるし。最高の梅だと思ってる。
- 滝口
- うちでも他に小梅植えてるけど、それと比べても、香りも違うね。でも、収穫も大変だよ。完熟するまで待ってなくっちゃいけないしね。
- 横尾
- 青いうちに収穫して、追熟させて黄色くしてから漬けると、皺が寄ってしまうこともあるから、ダメなんだ。
- 滝口
- うちでは、木の上で黄色くなってから収穫するから。収穫のタイミングを見るのが難しいのよ。落ちないうちに収穫しなくちゃだめだけど、少し熟れてくると、落ちてしまうし、んだから、わらわらもぎ(収穫)たくなんのよは。
- 横尾
- はははは
- 滝口
- 本当に次々と落ちるからね。落ちてしまうと、もったいないものね。
- 横尾
- 果樹は、梅だけじゃなく、りんごでもさくらんぼでも、かまわないで待ってるど、自然に落ちるのよ。下さ。ボトンって。
- 滝口
- そうそう。熟すると落ちる。同じ畑でも木によっても違うから。
- 横尾
- 同じ木でも南向きの方とそうでない方でも違うし、上の方と下の方でも違う。
- 滝口
- 色がついたのから順々にもがんなね(収穫しなくてはいけない)。収穫の時、軸がすっと取れるのが熟した証拠なんだ。力いれなくても抜けてくる。
- 横尾
- そうだと、軸が入ってこなくていいんだ。軸が入ってくると、洗浄や水に漬ける時にとらんなねんだ。
- 滝口
- 花が終わって、実がなるまでは、ひたすら待ってらんなねんだ。実が、どれくらいなるか見て、摘果作業をするんだ。ある程度の大きさにならねど「おろぬがんね」がら、「おろぬぐ」っていうのが摘果作業よ。いっぱい実がなって、摘果するに四日も五日もかかると理想的だげっと。
- 横尾
- いい実が出来るように、摘果できるぐらいたくさん実って欲しいな。
- 滝口
- 後は、自然の恵みで出来る梅を待ってるしかないんだ。
- 横尾
- 今年も楽しみだね。
- 滝口
- んだね~。
- 【山形弁(村山地方)のまま掲載しております。】
完熟間近の梅畑。
よこおともえ記