2、りんご酢の製造方法

2023年5月17日

2、りんご酢の製造方法

原材料のりんごについて…
もったいない精神



晩秋から冬にかけて、山形県内、
特に東根市と朝日町で収穫されたふじりんごが、
壽屋漬物道場に集められてきます。

生食用のきれいなりんごになれなかった、
形が不揃いだったり、
色がきれいに付いていなかったり、
傷がついてしまったりと、
いわゆる「加工用りんご」と
言われるものです。

通常でしたら、
ジュース用や農家や地元の方の
自家消費用とされるものです。
見栄えはよくありませんが、
糖度の高さは遜色ありません。

実は、このりんご酢作りは、
その昔はりんご農家さんも
行なっていた方も多かったようです。
(アルコール免許などの関係上、
自家用ではあります。)
それだけ、山形県内で採れるりんごは
糖度が高く、りんご酢になるのに
適しているとも言えるのです。
また、採れたりんごを
最後まで無駄なく食べ尽くそう!
という山形県民の「もったいない精神」の
表れとも言えるでしょう。


原材料のりんごについて…
磯部理念的見解



近年、お客様から、
「りんごの農薬が気になるので、
無農薬のりんごや
オーガニック栽培のりんごで
りんご酢を作れないか?」
という声をいただくことがあります。
残念ながら、壽屋では今現在、
そういったりんご酢の製造は
予定しておりません。

と、いいますのは、
磯部理念に基づく食品づくりを
行っております。
磯部理念には、
「食品の備えるべき四条件」
「食品に携わる者の四原則」
があります。

この四条件の中の
「品質に応じた買いやすい価格」を
守っているためです。
あくまでも、食品は日用品であり、
毎日食するために、
品質に応じた買いやすい価格を目指しています。
もし、無農薬やオーガニック栽培のりんごを使用すれば、
とても高価なりんご酢になってしまい、
多くの人々にとって日用品としての利用は
難しくなってしまうはずです。
一方で、「味のよいこと」にも
こだわっております。
無農薬やオーガニックのりんごを使用して
りんご酢を作ることで
味の向上につながるのであれば、
もしかしたら、
適正価格との兼ね合いを測った上で、
今後検討する可能性も
あるかもしれません。
また、完成したりんご酢については、
厚生労働大臣登録検査機関
「日本環境科学株式会社」にて
農薬検査を実施しています。
(2023年4月現在)
全て問題はないという結果が出ています。


1回目の発酵、アルコール発酵



まずは、りんごを丁寧に水洗いします。

次に、りんごを砕きます。
砕いたりんごに重しをかけて、
りんご果汁を絞ります。
漬物屋ですから、
重しをかけるのは得意なのです。

しぼった100%のりんご果汁は、
ほどよく温度管理を行うことで、
りんごに付着している自然酵母の力で
アルコール発酵が始まります。
これが1回目の発酵です。

アルコール発酵とは、
酵母が自らの持つ糖分を
アルコールに変えるもの。
アルコール濃度が
りんご果汁糖度のある一定の値になると
、発酵終了となります。
とはいえ、生きている自然の酵母の力です。
時期やご機嫌によって、
アルコール発酵にかかる時間は様々です。
根気が必要な作業となります。

お酒になった100%りんご果汁。
りんごの香りがして、
とても美味なのです。
免許の関係上、
みなさまに楽しんでいただけないのが
とても残念です。


2回目の発酵、酢酸発酵



りんごのお酒に酢酸菌を入れることによって、
今度は酢酸発酵が行われます。
酢酸菌がアルコールを食べて、
酢酸発酵が起こります。
2回目の発酵です。

壽屋で使用している酢酸菌は、
平成9年に、公益財団法人発酵研究所から
ほんの少しの種菌を購入。
これを、壽屋のりんご酢研究所内で、
24時間365日、
二十数年間に渡って
培養し続けています。

酢酸発酵の立ち上がりまでも、
さらに根気が必要です。
酢酸菌の状態やご機嫌によっても
かかる時間は様々です。

酢酸菌は、発酵するのに
空気が必要な好気性の菌です。
このため、速やかな酢酸発酵を促すために、
一定量の空気を絶えず
送り込む方法を取っています。

そして、酢酸発酵を終えて
りんご酢になった液体は、
ここから三年間の熟成と
おり下げの期間になります。

その後、透明な液体にするためにろ過をして、
瓶詰めを経て、いよいよ
三年熟成本格醸造りんご酢の完成となります。