本格醸造りんご酢が生まれるまで

2023年5月17日

本格醸造りんご酢が生まれるまで

おいしい漬物を作る秘訣には、
山形の気候風土や、受け継がれた歴史と技術、
そこで育てられた食材の豊かさなど、
さまざまあげられますが、
壽屋ではそれに加え食べる方への想いがあります。
理念に掲げるのは〝良い食品作り〟。

素材として使用される果実や野菜へのこだわりはもちろん、
そこに加える醤油やお塩など調味料は、
化学的に製造されている化学調味料を始めとする
厚生省の指定する食品添加物一覧表にある添加物は
含まれていないものを選んでいます。
そんな、本物へのこだわりから生まれた、
壽屋の「本格醸造りんご酢」をご紹介します。


1、りんご酢のなりたち

なぜ?漬物屋でりんご酢??



なぜ漬物屋なのに、りんご酢を作っているの?と、
疑問を持たれるかもしれません。


全ての始まりは、「食品添加物を
一切使用せずに漬物を製造販売しよう」
という思いからでした。



平成のはじめの頃です。
〝良い食品作り〟をすすめるため、

保存料の代わりに、お酢をたくさん使用して
漬物を作ることにしました。

そもそもこのお酢に食品添加物が入っていては
元も子もありません。

そこで、全国津々浦々、
食品添加物を使っていないお酢を探しましたが、
見つけられませんでした。


というのも、お酢を作るための法律に
秘密がありました。



1、発酵の過程で発酵助剤や澱下げ剤を使用しても、
食品表示には表示する義務がないこと。



2、アルコールを添加しても醸造酢と表記が可能。



このことから、食品添加物が入っていないお酢を
探すことが出来なかったのです。

「東根周辺では、おいしいりんごがたくさん採れる…」
「このりんごを使って
りんご酢を作ろう!」と、
思いつきました。


そこで平成11年から『りんご酢』の製造を開始したのです。


なぜ?三年熟成なの??



壽屋のりんご酢が三年熟成になった訳…
実はりんご酢が売れなかった暗い過去があるのです。

りんご酢を製造するにあたって、
りんご果汁をアルコール発酵させるという工程があります。
このため、アルコール製造免許を取得する必要がありました。
ところが、この免許は、
「年間約6t以上のアルコールを製造しなければならない」
というきまりがあります。
りんごにして約30,000個分です。

壽屋では、平成11年から、
真面目にその量のアルコール発酵を行いりんごのお酒を作り、
さらに酢酸発酵をしてりんご酢に。
と、決まりに従って作り続けてきました。

完成したりんご酢を漬物製造用に使用しました。
瓶詰めにして「りんご酢」として販売していました。
とはいえ、漬物用に使用しても余ります。
漬物屋が作った知名度のないりんご酢は
売れる量も少ないため、余ります。

貯蔵庫には、一年前、二年前と作ったりんご酢が
たまっていきました。
そのまま熟成されていったのです。
三年、四年とたまった所で気がつきました。

「熟成させると酸味がまろやかになる!」

ならば、この酸味のまろやかなりんご酢を
お客様にお届けするために、
「すべてのりんご酢を三年熟成りんご酢」
として販売することにしよう!と決めたのです。


あぁ、三年熟成…

「三年熟成」とラベルを貼り付けて販売し始めて、
少しずつりんご酢が認められるようになってきました。

2018年ごろのことです。
世の中の健康志向の高まりとともに、
りんご酢の健康効果が、
様々な所で謳われるようになってきました。
これとともに、壽屋のりんご酢を求めてくださるお客さまが、
どんどんと増えてきました。

2019年の夏前には、このまま売り続けると、
在庫が底をついてしまうという事に気がつきました。
そこで、急いでこの年の秋に収穫されるりんごから
製造量を増やしましたが、
すぐには販売できません。
「三年熟成」ですから…。

「たくさんのお客様を長期間に渡りお待たせしてしまう」と、
申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
一時は、最初の頃のように熟成期間をなくして販売?
とも考えましたが、
「お客様に三年熟成のまろやかなりんご酢を!」
との決意を変える訳にはいきません。

丁寧に、実直に、作り続けることが私たちに出来ることです。
従って、販売数量を制限せざるを得なくなりました。
予約してもらい、お待ちいただいた上での販売となりました。
一方で、ご希望のお客様はどんどん増えて、
結果として、予約期間が伸びてしまい、
長期に渡りお客様にお待ちいただくこととなりました。

一部ではありますが、発売開始直後から
ご愛用くださっているお客様もいらっしゃいます。
そういったお客様に、
お待ちいただかなければいけないことが
とても辛く感じられました。

しかし、驚くことに、
ほとんどのお客様は口をそろえるように、
「いいものが認められて本当にうれしい。」と
おっしゃってくださいました。
せっかく長年の苦労の甲斐があって
認めていただけるようになったのに、
供給できなくて、忘れられてしまったらどうしよう。
という大きな不安も正直なところありました。
しかし、この言葉をエールに、
私たちは、三年熟成を
しっかり守り続けることにしたのです。


本格醸造りんご酢と醸造りんご酢のちがい

ところで、
なぜ「本格醸造りんご酢」という名前がついているの?
そもそも本格醸造ってなに?と
疑問を持たれる方も多いかもしれません。

実は、現在日本で作られているお酢は、
醸造酢の日本農林規格で基準が定められています。

「醸造酢」には、アルコールを添加したものと、
アルコール発酵をさせたものがあります。
アルコールを添加したものは、
表示にアルコールと記載があります。

壽屋のりんご酢は、
りんごが持つ自然酵母の力で
アルコール発酵を行います。

「醸造酢」の中には、穀物酢と果実酢があります。
穀物酢は米酢と米黒酢があります。
果実酢の中には、りんご酢とぶどう酢があります。

米酢は1Lにつき40g以上穀物を使用したもの、
りんご酢とぶどう酢は1Lにつき300g以上果実の搾汁を使用したもの、
という基準があるのです。
(りんご酢は果汁30%以上であればいいということですね)

壽屋のりんご酢は、
100%のりんご果汁をアルコール発酵させます。

さらに、酢酸発酵と二回の発酵を経て、
その上で三年間熟成させています。

正確には壽屋のりんご酢も醸造酢に分類されるのですが、
醸造酢の基準を上回って作りあげているために、
区別する意味合いも込めて「本格醸造りんご酢」と
名付けているのです。
したがって、「本格醸造りんご酢」は商品名なのです。
正式にいえば「醸造酢本格醸造りんご酢」になるはずです。

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