2019年10月18日

子どもに伝えたい本物の味。

北海道の真ん中よりやや北東、北見市の南西にある置戸町。この町には日本一と評判の給食がある!と話題になり、NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」などでも取り上げられ、本も出版されました。この「日本一の給食」を作り続けてきたのは、佐々木十美さん。長年に渡り置戸町立学校給食センターの栄養士を務めてこられました。すでに定年退職して、現在は、食のアドバイザーとして全国を飛び回ってらっしゃいます。
この度、佐々木さんが壽屋を訪れ、漬物師範とこだわりについて語り合いました。
佐々木さん(以下佐)/本当に長年に渡ってこちらのりんご酢を使わせていただいております。ずーっとお邪魔したかったんです。念願がかないました。
漬物師範(以下漬)/ありがとうございます!給食で私どものりんご酢を使ってくださっていること、全く知りませんでした。大変失礼いたしました。どんなきっかけだったのですか?
佐/私が給食を作り始めた時は1970年代、1500食ぐらいを毎日とにかく必死でした。味つけには、「シチューの素」や「ダシの素」、グルタミン酸やイノシン酸などの入ったうまみ調味料もザバザバ使っていました。正直あまり美味しくないと思っていました。私は名前の通り十番目の子どもで、両親は明治生まれなんですね。化学調味料なんてまるで知らないで、かといって、そんなに立派な調味料を使っていたわけでもない。普通の畑で採れた野菜、手に入る食材できちんと作って食べさせてもらったっていうのが根本にあったんですね。だから、このやり方にとても違和感を感じていました。自分がおいしいと感じないものを子ども達に出すのはどうなんだろう?こんな所から勉強を始めました。その中で、ふだん何気なく口にしている食べ物や飲み物にたくさんの食品添加物が使われていることに気づきました。人間の体にどんな影響を与えるかわからない以上、子どもには出来るだけ食品添加物の入っていない安心なものを食べさせたいと考え始めたのです。そこで出会ったのが、こちらのりんご酢をはじめとした調味料です。最初に口にした時にびっくりしました。「味が違う!なんですか?これ??」っていう感じ。いいものは濃いので少量で味が決まるんですよ。でも、給食で使ってるって言うとみなさんびっくりされるんですよね。
漬/正直な所、私もびっくりしました。
佐/それはね、師範もご存知と思いますが、こちらのりんご酢をはじめ、お醤油もみりんもいい調味料は、少量で済むので1食あたりにすると、そんなには高くつかないんです。一度そういうものを使うと質を落とせない。だから、置戸の子供達は、本当に味覚が育っています。
漬/確かに、落とせないですね。きちんとした消費者の舌も厳しいものですからね。そもそも私どもの本格醸造りんご酢は、漬物用に食品添加物を使っていないお酢を作ろうという所から始まっています。りんご酢を製造するために、いったんりんご果汁をアルコール発酵させてりんごのお酒にしますので、酒造免許が必要なのです。ところが、年間最低でも6000ℓ作らなければ酒造免許はいただけません。漬物用だけするにしてはだいぶ多いので販売しておりましたが、あまり売れる商品ではなかったため、在庫として溜まってしまっていました。2年、3年と溜まった時に気がつきました。「3年熟成させることでよりまろやかな酸味になる!」それで、3年熟成本格醸造りんご酢が誕生しました。「3年熟成」と明記した所から少しづつお客様に認めていただけるようになって参りました。
佐/りんご酢裏話ですね!漬物用だったんですね。
漬/磯部理念に基づいて壽屋の漬物から全ての食品添加物を抜こうとして、保存料代わりに酢を使用することになりました。ところが、酢というのは食品表示の基準が少々曖昧です。アルコールを添加しても醸造酢と表示できますし、酢酸発酵をさせる際に発酵助剤などを使用しても記載の義務がないものなのです。したがって、食品添加物を使用しない酢を探すことができませんでした。ならば、自分たちで作ってしまおうと思ったのがきっかけなのです。
佐/私は磯部理念を特に学んだわけではないのですが、子どもに「本物の味」を伝えたいと思って給食を作ってきました。調味料は、いいものを使うと料理が本当においしくなります。子どもの方が大人よりも味覚が鋭いので、小さいうちに本物の味をたくさん経験してもらいたいです。そうすることで、いろんなおいしさを感じ取れるようになる。味覚が育って、おいしさの幅が広がるのです。私たちは給食を通して、食べることの基礎づくりを教えているのだと思って仕事をしてきました。「余計なものを入れない、丁寧に思いを込めて手作りをする」製造者の思いは通じ合うんだな。と改めて感じることが出来ました。

●「食べ活」のご案内

佐々木十美さんをお迎えし、壽屋隣りの古民家「野守の宿」でワークショップ「食べ活…トミさんの給食ごはん」を開催いたします。
・調味料のお話
みりん、みそ、塩、しょうゆの選び方
・お酢のはなし
いっしょに作ろう!トミさんと一緒に給食ごはん(何を作るかはお楽しみ)みんなでいただきます。
・トミさんのお話
〜給食に託した思い〜
「食べ活」とは、日常生活の中で「食べる」ことをちゃんと考え、未来の子供たちに伝えていこうという活動です。
私たちが生きていく上で欠かすことのできない「食べる」事。その環境が生活の豊かさや便利さとともにぞんざいになってきています。日本人が昔から育ててきた「食」の大切さを、もういちど見つめ直してみましょう。

12月1日(日)午前10時スタート
先着30名/参加料4,000円

参加ご希望の方は、お電話、FAXまたはこちらの問い合わせフォームよりお申し込みください!