3、りんご酢の効能について

2023年5月17日

3、りんご酢の効能について

一般的に言われている効果まとめ



・内臓脂肪の減少
・高めの血圧の低下
・血糖値の上昇を緩やかに

などの健康に関する効果は
一般的によく耳にします。

ほかにも、

・防腐、静菌
(お酢の力で食べ物を
いたみにくくします。)

・減塩のお手伝い
(塩分を減らすと物足りなく
感じる場合がありますが、
お酢を加えることで
素材の味を引き立て料理を
おいしくしてくれます。)

・食が進む
(お酢の酸味が
唾液の分泌を促進し、
食欲を増進させてくれます。)

生活にうれしい効果が
たくさんあると言われています。


摂取量について、悪い影響について



「どれくらいずつ摂れば効果がある?」
と質問をいただくこともあります。
お薬ではないので、
急な効果を求めるのではなく、
毎日少しずつ無理なくおいしく
摂取することをおススメします。
おいしくなければ、
好きでなければ
続けられないと思っております。
一般的には、飲む場合には、
1日10〜15ccほどとも
言われているようです。
そのままでは、酸っぱすぎますし、
胃を痛めてしまう
恐れがありますので、
水などでお好みの味に割って
お召し上がりいただくことをお願しています。

「酸が歯に悪い影響をもたらすのでは?」
というご質問をいただいたことがあります。

山形市の沼澤歯科医院の
沼澤孝典院長に伺ったところ、
「お酢をずっと口の中に
溜めておくような
特殊な飲み方をするなら話は別ですが、
健康のためお酢を飲むのは
全く問題ありません。」
というお話でした。

「お酢に抜去歯牙を漬けて
置いたら溶けたという実験は
聞いたことがあります。
それでも、何日も漬けていたら
という話ですから、
普段の食生活ではありえません。
大抵は、飲食後にうがいをしなくても
唾液が自然にアルカリに戻してくれます。」

それよりも、甘い炭酸飲料や
その飲み方に注意が
必要とのことです。
ペットボトルでの
ジュースなどの「チビチビ飲み」は
常に口の中が酸性になってしまい、
それがう蝕につながる危険が
あるそうです。


りんご酢共同研究

「三年熟成りんご酢」と
「十年熟成りんご酢」って
成分は違うの?
というお客様からいただいた質問…。

確かに、三年熟成りんご酢よりも
十年熟成りんご酢の方が
「色が濃くて褐色」
「酸味がまろやか」
「熟成香が強い」などの
違いはあるのですが、
成分の違いについて詳しく
考えたことはありませんでしたので、
お答えが出来ませんでした。
それだけでなく、
壽屋で作っている
本格醸造りんご酢について、
私たちは成分の分析などを
行なったことはありませんでした。

このため、2020年から
慶應義塾大学先端生命科学研究所と
山形県工業技術センター食品醸造技術部、
有限会社壽屋漬物道場とで、
「りんご酢を科学的に分析プロジェクト」と題し、
共同研究がスタートしました。

・メタボローム解析・微生物分析等による
りんご酢の製造過程と熟成による
成分構成の変化、
および菌種についての分析。
・他社りんご酢との成分比較分析
・菌種、温度帯など、
りんご酢の製造・熟成工程の
スモールケールでの試作評価

などを行いました。
成分分析に加え、
三年の月日をかけずに三年熟成と
同等のりんご酢を製造することも
可能ではないか?
また、菌のご機嫌に左右される
アルコール発酵と酢酸発酵、
時間がとてもかかることもあります。
より安定した発酵を行う方法は?
などの製造、作業上の
効率アップの可能性も
探ることになりました。

現在(2023年4月)、まだ研究最中ではありますが、
その中から興味深い点も
分かってきました。


乳酸、コハク酸が多い



メタボローム解析という手法で見てみると、
壽屋のりんご酢は、
市販りんご酢と比較分析して
乳酸、コハク酸が非常に多い
ということが判明しました。
一方で、リンゴ酸が
非常に少ない値であることも
分かりました。
数値で比較すると圧倒的な
違いがわかります。(表参照)

これは、壽屋のりんご酢が
うま味を伴う酸味が多く、
酸味の強度はやや低めで呈味
(食品に含まれている、
味を感じる原因となる物質)
時間が長いということ
のようです。
もう少しかみくだいて言うと、
「ツンとした酸っぱみがなく、
まろやかな酸味で風味も豊か」
ということでしょうか?

長年、お客様に
りんご酢の味を説明するために
使ってきたことばが、
科学的に証明されたような
気がする結果です。


マロラクティック発酵が起きている!



リンゴ酸が低濃度で、
乳酸が高濃度であるということから、
蔵付き乳酸菌による
「マロラクティック発酵」が
起きていると考えられます。

マロラクティック発酵とは、
ワインや日本酒などの
醸造の際によく使われる言葉ですが、
酵母によってアルコール発酵した後に、
蔵付き乳酸菌がりんご酒の中の
リンゴ酸を乳酸と炭酸ガスに
分解する発酵のことをいうそうです。

乳酸菌の働きによって、
このリンゴ酸を乳酸に
変化させることで、
減酸効果が起きて
味わいがまろやかになります。

壽屋に住み着いている
乳酸菌の力で、
こういった現象が起きて、
まろやかな酸味に
つながっていると考えると、
とても神秘的な気がしてきます。


ソルボースが高濃度



また、市販の酢と比較して、
ソルボースという物質が
非常に高濃度であることが
判明しました。

市販の本醸造りんご酢は、
他の市販の米酢などと比較して
ソルボースが高濃度ではあるのですが、
壽屋の三年熟成、十年熟成ともに
さらに高濃度であることが
グラフからも見てとれます。

このソルボースとは、
小腸での砂糖の分解を抑える効果が強く、
食後血糖値上昇抑制作用があり
糖尿病の予防、改善にむけて
期待されている甘味料なんだそうです。
したがって、
「食後の血糖値の上昇を
抑える効果がある可能性が高い」
ということにつながるようです。

もちろん、このソルボースは、
科学的に合成されて作られたものではなく、
二度の発酵を行い、熟成する間に
りんご酢の中に自然に出来上がってきた
物質なのです。


壽屋オリジナル酢酸菌の存在



壽屋のりんご酢製造は、
時間がとてもかかる、
気の長い作業です。
したがって、研究にも
時間がかかります。
時期によって、タンクによって
の違いなどがあり、
それぞれのサンプル抽出を
行いながら進められています。

壽屋で使用している酢酸菌は、
りんご酢を試験的に作り始めた
平成9年に、公益財団法人発酵研究所から
ほんの少しの種菌を購入しました。
これを、壽屋のりんご酢研究所内で、
20数年に渡り、365日24時間
培養し続けています。

酢酸菌は、様々な状況に応じて
変化を繰り返して
新しい型の酢酸菌に
生まれ変わっていると
みられています。

実は、今回、
タンクの中から抽出して調べた結果、
平成11年に購入した酢酸菌の姿を
発見することが出来ませんでした。
その変わりに、世の中にいる酢酸菌とは
異なる壽屋独自の酢酸菌の存在が
確認されたのです。
長年に渡るりんご酢醸造の中で、
どんどん変化して生き残ってきた
壽屋オリジナルの酢酸菌。
実は何種類か生存しており、
その時々の状況に応じて
ひとつの酢酸菌が勝ち上がって、
もしくは何種類かの酢酸菌が共存して、
壽屋のりんご酢を作る酢酸発酵が
行われているようです。
私たちの知らない菌の世界。
過酷な生存競争があるのか?
それとも、助け合いの
持ちつ持たれつなのか?
想像は大きく膨らんでしまいます。

今回抽出された
オリジナル酢酸菌の中で、
最も発酵速度が速く、
到達PHが低かった酢酸菌が
「壽屋オリジナルNo.7」。
食味も他に比べて良いという結果も
出ています。

今後は、
このNo.7を使用しての
商品開発なども視野に
入れていきたいと考えています。