2021年10月19日

里山と生きる。

山形県の日本海側庄内地方、米どころとして知られるこの地で澁谷さんが作るお米。
長年、壽屋ではそのお米を販売してきました。出来るだけ農薬を使わずに作るため、玄米として食するのにも適しています。

澁谷さんと娘婿の齊藤さん、娘さんとともに後1週間ほどで稲刈りが始まる田んぼにて。
畦畔の草がとても綺麗に刈られていました。

先人のおかげで今があるのです。

山形県鶴岡市たらのき台という山間地、標高300mに澁谷さんの田んぼがあります。昔は水が乏しいために養蚕が盛んな地区だったそうです。江戸時代天保の大飢饉後に、苦労の末に灌漑用水を引いたので稲作ができるようになったとのこと。「庄内=水が豊富=米どころ」は全くあてはまらない地域なのです。月山に積もった万年雪が解け出して、途中の生活用水や農業用水などが入り込まないまっさらな水を使えるようにしてくれた先人たちへの感謝の気持ち、澁谷さんの話の節々から感じ取ることができました。


月山の万年雪が解け出した水が、生活用水や農業用水などが入り込むことなく
貯水池から水田へと直接流れていきます。

よくばりすぎず、バランスが大事!

澁谷さんの田んぼを訪れたのは、後1週間ほどで稲刈りという実りの時期。稲の穂の数を見て「もっといっぱい付ける事も出来るけど、しないの。安全策を取る。」と澁谷さん。少年のようなお茶目な表情です。「数がいっぱい付けば収量も上がって、収入も上がるけどね。お金を考えなければ、米作りは最高の楽しみだ!まぁ、収量が少ない分は林業でがんばるよ。」と笑顔。つまり、やり方次第で米の収量は増やせるが、台風や大雨などの被害を受けるリスクも上がってしまうそう。モミ数を下げれば、収入は下がるが、俄然おいしいお米が出来るそうです。

来年でなんと60回目の米作りという澁谷昭明さん。

実は澁谷さんは、現在は娘婿さんとともに株式会社リンショウという会社も営んでいます。主に、森林を維持するための植樹や保全事業が多く、庄内地方のシェア8割を占める成長企業です。澁谷さんの経験や人脈を生かして作り上げた会社で、農業とのバランスを取りながら経営されています。娘婿さん達の功績を尋ねると、「昔の人は稲の花が咲く時期に天気が悪かったら、すぐにそばと大根を植える。食べるために。それと一緒。」とはぐらかされました。澁谷さんの言葉の全ては、来年で60回目の米づくりという経験と自信に裏付けされています。「失敗もいっぱいあったし、毎年違うからね。」という言葉が深く響きました。

人との輪を大切に。

「畦畔の草はしっかり刈る。」という澁谷さん。収穫直前で、害虫の心配もないけど、周囲の方々が草刈りをしているので、自分も。ということ。共同貯水池も驚くほど綺麗に草刈りや手入れがしてありました。地域の方々との輪を守る生活。家族との協力。手を取り合って生きている姿を見ることが出来ました。
声高に環境保全を叫んだりしない、しかし与えられた環境を大切に守り、作物を作り、次世代につなげていく心豊かな生活がそこにはありました。根底にあるのは、先人を尊び、仲間や家族を思い、ほどほどにという穏やかな心。少し昔の人たちの、食べるための危機管理能力を受け継ぐたくましさ。今の時代に欠けつつある事なのではないかと思います。澁谷さんの田んぼを訪れて、米作りから生き方を学ばせていただけました。

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