2011年6月29日

農家・矢萩さんと語る、農業の将来。

東根市で果樹農家を営む矢萩さんは、さくらんぼや節田梅などを栽培されています。
節田梅栽培の苦労と、今後の果樹農家としての展望を伺いました。

節田梅の果肉はとにかくデリケート。女性の肌のようにね。

漬物師範・横尾昭男
やっぱり東根産の「節田梅」でないと茜姫はうまぐ出ねなよ。あのトロリとしたとろける食感が、南高梅ではなかなかうまくいかないんだ。いろいろと試してはいるんだけど。納得いくものが出来ないんだ…。
果樹農家・矢萩正巳さん
節田梅は特に熟すると一気に落下するのが泣き所なんだ。熟しても少しの間落ちない品種の梅もあるのに…。
横尾
節田梅はそうはいがねもね。黄色く熟した瞬間に落ちるんだものね。
矢萩
落ちた時にクッションがないと果肉を傷めるから、土さ付くとダメだし、一晩置くとダメだし、完熟したときが一番節田梅がうまい時なんだ。雨さ弱いべ、日焼けはダメだべ、女性の肌とおんなじ、本当にデリケートなんだ。収穫時期はとにかく気使うね。その分、育てるのにはそんなに手間かからないけどね。寒い冬の時期、休眠期があれば、大丈夫。温暖化してきてても、収穫は可能だ。摘果だけはしっかりさんなねげんとも、肥料も有機肥料で間に合うし、消毒も少ないし。後は、出荷時に、大中小、規格外と選別して出荷してるんだ。去年はさくらんぼが遅かったので、梅の収穫と重なってしまって、落ちてしまったものが多くてもったいなかったな。落ちてしまうと商品価値ないもなぁ。
横尾
去年みたいさくらんぼが遅いとみな狂ってくるもの。
矢萩
さくらんぼと比べて受粉も簡単なのよね。節田梅は、3日ぐらい天気がいいとあっという間に受粉するけど、さくらんぼの場合は10日ぐらいかかる場合も多い。16度以上にならないとミツバチが飛ばないし、節田梅は、ハチが飛ばなくても、受粉している。不思議なのよね。

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梅の花が咲く、壽屋併設「野守りの宿」の縁側で。

果樹農家として今後将来を見据えて、お客さまのニーズに応える物を。

矢萩
気象条件が昔と変わってきて、作るれるものが限られて変わってきているんだ。大変になってきたな、と思って。今までしてきたことが出来なくなる可能性があるんだ。ある程度、将来を見据えたものを作っていかないと、1年や2年で出来るものじゃないから。今後、果樹農家を続けていく上で、ぶどうの生産にも取り組んでいこうかな。と思ってる。ぶどうへのニーズも変わってきていて、種ない、皮ないシャインマスカットっていう品種を作ろうと思って苗を植えているんだ。仕立て方も変わってきていて、剪定も女性でも出来るし、さくらんぼのように資材はかからないし、高いところにも上らなくてもいいという作業上の利点が大きいので、年をとってからでも栽培ができる。しかも、貯蔵性が高いので、お正月ぐらいまで出荷できる。という点も利点だし。
横尾
果樹といえば、壽屋では、りんご酢を作っている。山形のりんごは糖度が高いから、不揃いの部分を集めて、もったいないからりんご酢にしてるんだ。私は加工屋だから、ぶどうもぜひ、加工して売ったほうがいいと思うな。

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漬物師範・横尾昭男

安全安心が全ての切り口。

横尾
お客さんは二分化しているね。徹底的に安さを求める方ともうひとつは、安全で安心な品物の価値を見極めて購入する方に分かれてきてんなよ。
矢萩 顔の見える取引が重要だね。
横尾
お客さまからお客さまへの口こみで広がっていくのが一番いい方法なんだな。そのためには、安全安心が一番の入り口だと思うなよ。んだがら、うちは食品添加物を一切使用しないって方法で商品作りをしてるけど、独自のやり方を追求していがんなねど思う。自分独自の品種作りっていうのもいいなんねがな。
矢萩
さくらんぼは品種が少ないので、実はもっとおいしい品種もあるんだげど、なかなか消費者さ届がねんだな。「大正錦」どが「南陽」どが昔ながらのうまい品種もあるんだ。「紅秀峰」なんかもこれから伸びると思うよ。食べてみると「なんだ、こだなうまいなあるんだっけが」て言われることも多いんだ。 去年は夜が暖かくてさくらんぼの色がうまく付かなかったな。地球温暖化で、寒暖の差が少なくなってきているから、着色が悪くなってきてんだ。味はいいんだけど。消費者は、目で見て買う部分もあるから。
横尾
もちろん、目で見て買う部分もあるんだけど、「おらいの青菜漬は、色悪いけど、んんっとうまいんだ~。」って言って売ってる。んだって、本当の青菜漬って、んまいのは色悪いべ、地元の人は知ってるけど、都会ではなかなか分かってもらえねなぁ。でも、「色悪いけどいいが?」って事で売るほうが、実際の所、うまい青菜漬、食ってもらえるもの。
矢萩
果樹の場合、量販店やスーパーさ出回るから、色いいな求められるんだ。だから、消費者さ直接販売していけるような方法がいいんだな。これからは、生から加工して生産して、直接消費者へ。という第六次産業的な形もいいのかなぁと思ってるんだ。おいしいものをよちゃんと届けられるように。
横尾
んだ、安全安心ほしておいしい物ばちゃんと作れば、必ず展開は開けるなんねがや。
【山形弁(村山地方)のまま掲載しております。】

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完熟間近の矢萩さんの梅畑。

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矢萩正巳さん
昭和28年生まれ 55歳で定年退職後果樹農家となる。
現在はさくらんぼ・ラフランス・ぶどう・節田梅を栽培