2016年12月15日

「発酵」から生まれる元気な食卓。

壽屋の、菌とまじめに向き合う
おいしさの提案 文・阿部薫

毎日の食生活に「菌」を。
発酵食品を知る

 近年、体に良い菌を積極的に取り入れる「菌活」が話題となっており、美容や体調管理を目的として、多くの方が実践しています。そもそも、お味噌や醤油、納豆、そして漬物といったように、日本人の食生活と発酵食品はもともと身近な存在でした。人々の菌への興味と関心が深まる中、日々安心安全のおいしさを届けたいと食品作りを手掛ける、壽屋漬物道場、横尾昭男つけもの師範にお話を伺いました。
「〝発酵〟の反対は〝腐敗〟。どちらも微生物の特殊な菌の働きによって起こる現象ですが、全く異なる意味合いを持ちます。発酵は人間にとって有功であり、腐敗は有功でない。面白いですね」と師範は笑います。漬物は漬け上がると食べることができますが、食す時期を逃し発酵を進めてしまえば腐ってしまう。また、漬物に必要ではない菌が混入してしまえば、発酵の状態が不安定となり食べられなくなってしまうことも。「菌はどの空気中にも存在するもの。発酵食品を作る上で大切なのは、作る場所と温度管理。同じ食材を用いても作り手によって味が異なるのはそういうことですね」。壽屋では品質管理の徹底はもちろんのこと、漬物の種類によってほとんどの桶が決まっているのだそうです。「体のために菌を取り入れたいという方が多いとのことですが、食べておいしいと感じるものは、きっと〝体が求めているもの〟だと思いますよ」。


お客様の食卓を思い浮かべながら、発酵についての興味を語る、壽屋漬物道場 横尾昭男つけもの師範。
多くの知識と技術を身に着けながらも、もっともっとおいしいものを届けていきたいと、手掛ける食品の全てに情熱を注いでいます。

2回の発酵から
安心安全、本物のりんご酢を

 発酵によって作られる食材は様々ありますが、壽屋が誇る一品の中に「りんご酢」があります。原材料を見て見ると、書かれているのは〝りんご果汁〟のみ。りんごだけでお酢は作られるのでしょうか?「お酢には穀物酢、米酢、果実酢と様々あり、アルコール発酵をさせた後、酢酸発酵、さらに3年以上熟成させるという工程で作られます。しかし、それでは手間と時間がかかると、一般的に販売されているお酢の多くは、原料をアルコール発酵をさせずにアルコール成分や発酵助剤を添加するなどして作られているようです。それでも現在日本農林規格(JASマーク)では、この製法で〝醸造酢〟と表示してよいことになっており、さらには発酵助剤の添加を表示する義務もありません。壽屋では漬物の加工にお酢を用いていますが、この事実を知った時、本物のお酢が無いのであれば、自らの手で作りたい、そう立ち上がったのです」。山形産のりんごを使って100%果汁を作り、りんごの自然酵母によって発酵を進め、りんごワインが出来上がります。そこへ酢酸菌を加えて発酵。時間をかけて澱を下げ、ごまかしのない本格醸造のりんご酢が完成となります。原材料はりんごだけ!実に3年がかりで誕生したりんご酢は、お酢本来の独特な発酵香があり、味はまろやか。「お酢ですからいくら体に良いからと言っても、がぶ飲みするのはおススメできませんね。お水やジュースで割って飲んだり、調味料として使用すると、きっと本物の味を実感してもらえるのではないでしょうか」。師範の食卓の上には、醤油やお塩などの調味料と一緒に、りんご酢が添えられているそうです。「納豆やめかぶに、ちょっとのお醤油とお酢。毎日のご飯が本当においしくてね」。


りんご果汁からワイン、そしてお酢へ。完成を待つ樽を優しく見守る、丹野工場長。

発酵は面白い!
まだまだ続くおいしさの探求

 漬物やお酢、常にこだわりの食品を手掛けてきた師範。「〝発酵〟はとても奥が深く、知れば知るほど面白い」と目を輝かせ、語ってくれました。今一番の興味は〝麹〟。その技を取得するための勉強と、修行を着々と進めているそうです。麹とは、蒸したお米に、麹菌を繁殖させたもの。味噌や醤油の材料に用いられる他、塩麹や甘麹は調味料として注目を浴びています。麹を作るには温度や湿度の管理が難しく、昔はどの地域にも麹屋さんがありました。「麹を用いた漬物作りは昔ながらの手法。糀そのものの甘みや旨みが漬物の良さをさらに広げてくれます。麹をどのように活用していこうか、毎日ワクワクしているんです」。
知りたい、食べたい、手掛けたい…師範の発酵にかける熱い想いは、お客様への愛情と共にこれからも続いていきます。