2013年6月15日

東根、節田梅の実る里。

さくらんぼの生産量日本一を誇る山形県東根市。
広大な果樹畑に植えられた木々に、まぎれるように育つ節田梅。
他の果樹に先駆けてうすピンクの花を咲かせる節田梅の里を、
壽屋寿香蔵の横尾友栄が訪ねました。


40年以上節田梅を作り続けている滝口さんご夫婦。

滝口良子さん
「花がちょうどいぐってきれいだべ〜。これぐらいだど、ピンク色も濃いな〜。」
滝口仁三郎さん
「今年は、ちょうど花が咲いた時に雪が降って低温になったんだ。どうなっかね〜。」
元々東根市では、多くの畑で葉たばこの栽培を行っていましたが、夏の厳しい暑さの中での作業が過酷であることや、需要が少なくなったために、昭和40年代以降、梅などの果樹に植え変えたという農家が多かったようです。滝口さんが他数人の農家の方々とともに節田梅を植えたのもその頃。とある青果業者から苗木をもらったことがきっかけだったと言います。
仁三郎さん
「40年以上になっべなは。たばこの土地に梅が合うかどうかなて計算もしねっけ。見てみろ!大丈夫だったけべ。そったつ(慌て者)なんだ。ただただ楽しみにしったけ。」
約300坪の畑に33本の梅の苗木を植えたという滝口さん。当初は地元の青果業の方を通して秋田の加工業者に販売。梅干しに加工していたようですが、それには粒が大きすぎ、種も大きい、しかも皮が薄いということもあって、なかなかうまくいかなかったようです。その後、壽屋の茜姫用として出荷するようになったということです。


訪問した4月23日は、梅の花が八部咲き。それでもミツバチたちが元気に飛び回っていました。

良子さん
「うちでも梅干しにするけど、でっかいがら、ひとつの梅干しでごはん2杯も3杯も食べらんなね〜(笑)茜姫にすっどうまぐ食べられるな〜。よく節田梅の特徴を活かしてるね。おらいでもぽたぽた梅なて作るんだ。」
ぽたぽた梅というのは、良子さんが作る梅の砂糖漬です。節田梅を3日ほど酢に漬けて、梅1㎏に対して700gの砂糖に漬け込むもので、農家のお母さん方は様々に工夫をして作ってらっしゃいます。壽屋ではこれを基に茜姫の商品化を行いました。
仁三郎さん
「古い所を切って、新しい所を残しながら、枝全体に日が当たるようにも考えながら剪定さんなねのよ。」
良子さん
「枝切るのはおとうさんの仕事。私は枝拾い。剪定は難しいから、おとうさん頼みなのよ〜。寒い時だがら大変だよ。」
病気にも強く、比較的育てやすい節田梅ですが、栽培の中で特に気を使うのが剪定と摘果だそうです。剪定は伸びすぎた枝をカットする作業。行うのは、冬の間。木のバランスを整えておかないと、養分が枝にばかり集中してしまい、実の成長が悪くなる原因になるんだそうです。


枝の剪定。節田梅は、新しい枝は一年で1m近く伸びる。

仁三郎さん
「長年の経験がものをいうなぁ。ほどほどってのが一番大切なんだ。欲たがっど(欲張ると)、ダメなんだ。」
摘果は、実が小さいうちに適量を残して省いていく作業です。時期を逃すと、実は大きくならない、残す実の数が多すぎれば、実が大きくならない。非常に緻密さを要する作業ということです。欲張らずにほどほどが大切、という仁三郎さん。
仁三郎さん
「収穫する時はいいなぁ。顔もニコニコなっべ。実もきれいだし。」
良子さん
「収穫の時は娘たちや親戚が集まってくるんだ。みんな楽しみにしてるんだ。」
葉たばこから一気に節田梅に切り替えた大胆さ。長年の経験に裏付けされた緻密さ。多くを語らない穏やかな表情に、自然と対峙しながら長年作物を育ててきた人間の器の大きさを感じさせられました。一方で良子さんのだんな様を尊敬し、慕う気持ちも節々で感じることが出来ました。古き良き理想の夫婦の姿を見せていただいた気分です。今年の実りが楽しみです。(横尾友栄)
【山形弁(村山地方)のまま掲載しております。】